はじめに
近年、いじめに関する問題や事件に関するニュースを目にする機会がぐっと多くなったような気がします。文部科学省が行っている調査によると、いじめの認知件数は年々増加傾向にあり、中にはいじめられた子どもが自殺に追い込まれたり、身体的や精神的に深く傷ついたりと、とても痛ましい事案もあります。
しかしこうしたニュースを見る中にもどこかで「わが家には関係ないこと」と思っていませんか?最近のいじめは「ネットいじめ」が増加しており、大人が発見・介入するのがとても難しくなっているのです。
今回は今のいじめの手口や特徴、また家庭や学校でできる対策についてお話しします。
最近の手口「ネットいじめ」とは?
文部科学省が行った2014年度の調査によると、いじめ全体の認知件数は、小中高校と特別支援学校を合わせて計18万8057件と前年度より2000件以上増加して過去2番目に多く、小学校は12万2721件で過去最多だそうです。認知件数が近年急増しているのは、いじめが原因で自殺したとみられる事案が相次いでおり、国や各学校が軽微なものでもいじめを認知して悪化防止や解決につなげようとしていることもあげられます。
現在問題となっているのが、スマートフォンなどの携帯電話やパソコンを使った「ネットいじめ」のようです。もはや誰もが持っているツールと言っても過言ではないため、子どもだけではなく、大人でさえも被害に遭う可能性は大きいです。主なネットいじめには、LINEやSNSなどを使って特定の人物の悪口を言ったり、あらぬ嘘を言いふらしたりと被害者本人の知らないところで行われているケースや、あえて本人に直接嫌がらせのメッセージを昼夜問わず送りつけるケースがあります。学校以外でも嫌がらせをされる恐れがあるということは、子どもにとっても気が休まることがなく辛いでしょう。
文科省の調査によると、ネットいじめの認知件数は7898件(前年度は8788件)と全体の4.2%ほどですが、24時間どこにも逃げ場がなく、かつ周りに分かりにくいためとても悪質ないじめだと思います。また、通常のいじめであれば転校で逃れることができますが、ネットいじめはネット上に情報がずっと残りますし、加害者側が止めるまで追跡されてしまうため被害者の精神的負担が大きいのです。
ネットいじめを防ぐ!家庭内でもルールづくりを
もちろん、スマホや携帯電話といったツールを持たせないことが一番ですが、一概にもそう言えなくなってきたのがこの時代です。持っていないと何かと不便なことのほうが多くなってきました。そのため、せめてそのような被害に遭う場面を減らす努力をすることをおすすめします。
家庭でできる対策としては、携帯電話を使う時間を決めておくことでしょう。いくら仲の良い友達とはいえ夜遅くに連絡取り合うのは非常識ですし、勉強や趣味の時間を作るためにもだらだらと携帯電話を弄るのはよくありません。夜9時、10時以降は居間の見えやすいところに置かせ、どうしても必要な連絡があった場合は居間で操作するようにルールを決めるとよいでしょう。
また、保護者がLINEやSNSの利用を禁止しているという理由があれば友達にも断りやすいはずです。直接顔を合わせて会話するコミュニケーションと、文字だけのコミュニケーションでは誤解を生みやすいということを日頃からしっかり教えることが大切です。相手の顔を見ながら、もしくは電話で話していると、相手の声色や表情、ジェスチャーで相手の気持ちを汲み取ることができますが、文字だけではどうしても誤解が生まれやすくなります。これは大人でも言えることでしょう。仕事の要件をLINEなどでやりとりする場面が増えたかと思いますが、行き違いが起こったりするので危険かもしれませんね。
特に子どものメッセージのやり取りは短く淡泊で、時には冷たい印象を受けることも多いので、「この言葉を見たら相手がどう思うか」をしっかり考えて正しい日本語を使うように心掛けさせましょう。
加害者にも被害者にもなり得る
以前、国立教育政策研究所が首都圏の小中学生を対象に行った調査によると、いじめられた経験のある子どもといじめた経験のある子どもはいずれも9割近くおり、立場は交互に入れ替わっているということが分かりました。また先ほどお話ししたように、ネットいじめの被害者は判明しているだけで8000人近くいますが、周りに認知されていない潜在的な被害者はもっといると考えられています。
そうしたことを踏まえる、いじめは決して「我が子は大丈夫」と思えることではありません。いつだっていじめの加害者にも被害者にもなり得るのです。日頃からお子さまの行動やしぐさ、言動など注意して見てあげてください。
おわりに
今やネットは特に若い世代に急速に浸透していて、数え切れないほど多くのアプリやSNSが日々あふれ出ています。こうした若者向けの文化も保護者は知っておくべきです。危険性を見極める必要があるからです。また、そのような流行を知っているだけで子どもは保護者に相談しやすくもなります。お子さまと一緒にアプリやSNSを学んでいき、いじめについて考えていきましょう。
【つづきはこちら】
いじめ特集② もしかしていじめに遭ってる?見逃さないでSOSのサイン!
いじめ特集③ 子どもをいじめの加害者にさせない