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過保護と過干渉① 過保護と過干渉の違いとは

はじめに

最近、出産した方から、こんな話を聞きました。

 

「私は、なかなか赤ちゃんができなかったせいもあり、この子が生まれて、両家の親たちは、もう大変なの。うれしくて仕方がないみたい。それはいいんだけど、婚家の親が、かなり甘やかしていて、この子もそれをわかっているみたいで、我が強く、私のいうことなどなかなか聞かず困っている」

 

という話でした。

 

どこにでもある家族間の風景ですが、このように育児に悩む保護者の方はとても多いでしょう。

 

そこで、今回は、どの親も遭遇する「過保護と過干渉」について考えてみたいと思います。

 

 

「過保護」は子どもの意思が尊重されすぎること

過保護とは親が子どもに対して過剰に守ってしまうことです。子どもが自分自身でできることでも、親が何でも変わりにやってしまうと、それは過保護と呼ばれます。

 

例えば、学校まで歩いて通える距離なのに積極的に車で送迎したり、忘れ物をしたら学校まで届けたり、先生に注意されて腹が立つと言ったらそれに深く同調して学校側に一方的なクレームを入れたりすることです。

 

必要以上に子どもを守ったり、甘やかしたりするとこども自身の自主性や、社会人として活躍する力を摘み取ってしまう恐れがあるようです。

 

「過干渉」は虐待?過干渉で子どもを自分のものとして管理してしまう

過保護に対して、過干渉とは、子供に対して必要以上に干渉することです。

 

干渉という言葉自体に、「他人のことに関して立ち入り、自分の意のままにしようとする」という意味があるので、過干渉となると自分が「管理」したいというような思いが感じ取れます。

 

例えば、子どもの友だち関係において「Aくんは乱暴だから、付き合うな」と言ったり、子どもの日記を読んで日常行動を把握したり、日々の生活において、子ども以上に口を出すことなどがあります。

 

「過干渉は、虐待の一種」という専門家がいるほど、子どもにとっては、人格形成に大きく影響を及ぼすと言われており、その影響は、親や保護者が、子どもを一人の主体的な人間として認めず、子どもの意思や思考、自我の発達や自主性などを否定して、操り人形のように意のままにコントロールするまでになってしまうこともあるといわれています。

 

過保護と過干渉の違い

過保護は子どもが望んでいることや自身でやれることを、何でも親が先回りしてやることを言いますが、過干渉は子どもが「やりたくない」、「してほしくない」ということを親が良かれと思ってしてしまうことです。

 

過保護と過干渉は、時々混同されて用いられることが多いので、その違いをよく理解することが必要です。

 

過保護な親になる原因①夫婦関係や自分が子どもの頃の家庭環境

親が過保護になる原因には様々なものがありますが、ここでは特に代表的な原因として、夫婦関係と、親の育った家庭環境があります。

 

多くの場合、過保護になってしまうのは、母親の場合が多いようです。 夫がいつも仕事で忙しく、家庭を顧りみなかったり、夫婦関係がうまくいかなかったりして母親に不満が積もってくると、当然、意識の矛先は子どもに行きますね。

 

そして、「子供へ愛情を注ぐことが一番」と思うようになってしまうことも少なくありません。その思いが深くなればなるほど、親自身はそこに「自分の存在意義」を見出して、「自分がいなきゃ子供はだめになる」と思い込み、行動してしまうということになってしまいます。

 

最近では一人っ子も増えていますので、子供一人にかまう時間も増えているのも原因のひとつとも考えられています。また、親自身の育った環境もあり「親自身が過保護に育てられた」経験をもつ親は、その経験で育児をしてしまうという悪循環となる場合があるのです。

 

過保護な親になる原因②子どもに嫌われたくないという気持ち

「子どもに嫌われたくない」と思っている親は少なくありません。確かに、「自分は子どもにとって良き親でありたい」と考える事は間違っていません。

 

しかし、その思いが強すぎて、子どもの欲求に対して子どもの意のままに行動すると、子どもは「お父さんやお母さんはなんでも許してくれる」と間違った学習をしてしまいます。そのため、いったんそのように学習した子どもは、自分の欲求を拒否された場合、様々な行動を起こし、親とぶつかることになります。

 

では、どうして「子どもに嫌われたくない親心」が働くのでしょうか?

 

これには、まず「自分自身の行動に自信が持てない」ことがあると思います。特にはじめてのお子さんの場合、育児に対する不安が蓄積されて、自身喪失となった場合が考えられます。

 

次に「子どもを叱ると、子どもが自分から離れて行ってしまう」不安です。「叱る、注意する」イコール「子どもが離れてしまう」と思い込んでしまうのです。

 

そして、最後は「子どもを傷つけたくない」思いです。

 

しかし、よく考えてみると、根底にあるのは、これらを理由として「親自身が傷つきたくない」思いがあるためのような気がします。

 

保護と過保護の境界線は?

では、保護と過保護の境界線はどのようなものでしょうか。結論からすると、「境界線はこれ」というものははっきりしないのではないかと思います。

 

子どもが困っている場合はそっと支えてあげ、少し頑張ればできることには手を出さず、少し遠くから見守ってあげることが大切ですね。

 

過干渉の親になる原因①親の自己愛が関係

次に、過干渉になる原因です。過干渉は親の自己愛が関係していると言われています。

 

自己愛が強くなると、子どもを自分とは異なる独立した人間ととらえず、自分の一部と考えてしまい、心理的にくっついてしまった状態となります。そうすると、親が何を考えているか、親が何を求めているかを、親がいちいち言葉にしなくても、子どもがすべて察することを期待し、また親自身も同様に、子どものことをすべて理解しているとの思い込みが生まれます。

 

このような状態を精神分析では、「共生期」と呼ばれているのですが、これは大変心配な人間関係の一つです。こうなると、子どもの独自性は奪われてしまいますので、親のためのみに行動する子どもになってしまう恐れがあります。

 

過干渉の親になる原因②過保護への過度な恐れ

過保護というと、好ましくないイメージがあるため、多くの親は過保護にならいよう気を付ける行動を取ります。

 

しかし、それが行き過ぎると「少しでも子どもの自由にさせると、わがままな性格になってしまう」との恐れが生まれて、それを避けるために子どもの自由を一切奪うような養育に変化する場合があります。動機が「恐れ」であるため、その不安を振り払うために、精神的に強迫的になります。

 

そして、子供の行動一つ一つに、干渉してしまう行動につながっていくようです。もっとも過干渉の原因は、どちらかに分かれるというよりも、両方の原因が関与しているようにも思えます。

 

おわりに

いかがですか。

 

過保護と過干渉、考えれば考えるほどわかりづらい言葉のような気がします。

 

次回は、実際に、過保護や過干渉について、どのような影響がでるのかを考えていきたいと思います。

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