はじめに
「調味料で味を変えても全然食べない」「この前は食べたのに何で今日は食べないんだろう……」
このように、お子さま激しい好き嫌いに日々頭を悩ませる方は多いはずです。スーパーでは豊富な食材が並んでいるので、例え特定の野菜を食べなくても、別の食材で栄養補給は十分可能です。
しかし、自分の子どもにも旬の食材を楽しんだり、いろんな食材の美味しさを知ってもらいたいですよね。今回は好き嫌いはどうして起こるのか、どのように対応すべきかを考えてみました。
好き嫌いは本能も一因
子どもは味覚が大人より鋭く、味に敏感なようです。その理由は味を探知する器官「味蕾(みらい)」の細胞数が大人の2~3倍あるそうで、大人が食べても苦みを感じないものでも、子どもは苦みを感じ取ることができるようになっているそうです。苦味などを嫌がるのは、自然界にある毒のある食べ物(苦味)や腐った食べ物(酸味)から体を守るために本能で拒絶しているということみたいです。
また、「前は積極的に食べていたのに今日は一切食べない」ということはありませんか?もしかしたら以前、「カキを食べた後にお腹が痛くなった」「魚の骨が喉に刺さった」、など食べ物が原因で体調を崩したり怖い思いをしたりした可能性があります。こういったことが食べ物を避ける要因となるみたいです。
親が嫌いな食べ物は子どもにも影響する
本能のほかに、親の嗜好が子どもの好き嫌いに影響しているようです。ある大手食品メーカーが発表した、子どもの野菜の好き嫌いに関する調査によると、親が嫌いな食べ物は自分の子どもも嫌いになるという傾向にあることが分かりました。
調査は子どもの野菜の嗜好や母親自身の野菜の嗜好などを聞き出し、子どもの約6割に野菜の好き嫌いがあることがわかり、特にナスやピーマン、椎茸、水菜を嫌う子どもの割合が高かったそうです。また母親の好き嫌いと、子どもの結果を照らし合わせたところ、母親自身が子どものころから好き嫌いがある場合、その子どもの好き嫌いがある割合が73.1%と全体より高い結果となり、反対に、母親自身の子どもの頃から好き嫌いがない場合は、その子どもの好き嫌いがない割合はが6割を超えるという興味深いことが分かりました。
妊娠時からできる食育
それではどのように子どもの好き嫌いに対応すると良いのでしょうか。実は子どもがお腹の中にいるときからできる対策もあるみたいです。
味蕾は、妊娠3か月ごろから発達し、妊娠5か月~生後3か月ごろに形成のピークを迎えます。なので母親が食べた物の風味や匂いを、胎児は羊水を通して、出産後は母乳を通して感知しているのです。そのため妊娠から授乳期に母親が野菜を積極的に摂っていれば、子どもが野菜の風味に少しずつ慣れ、いざ野菜が自分のご飯として食卓に出ても食べることができる傾向があるそうです。実際にアメリカで行われた実験によると、妊娠中に人参ジュースを飲んでいた母親の子どもは、飲まなかった母親の子どもよりも抵抗なく生後半年でシリアルに混ぜたニンジンジュースを飲んだそうです。
また味覚の発達は3歳ごろまでと言われており、この期間に少しずつでも色んな種類の食べ物に慣れさせるのも重要だと言われています。
今からでもすぐにできる3つの食育
子どもが3歳を過ぎても、もちろん好き嫌いを直すことはできます。
①苦手な食べ物を食べる頻度を増やす
苦手なものを一口だけ食べるなど、ルールを設けて根気強く食べ慣れさせるのがいいです。
また、親の食器にだけ盛り付けて、親がおいしそうに食べるのを見せるだけでも効果的です。他人の物が気になる幼児にとって、大人だけにあるご飯がおいしそうに食べられていると興味が引かれるそうです。
②食べ物に対してのマイナスイメージな言葉を控える
皆さんにこんな経験はありませんか?今までは普通に食べれたのに、親が「これ生臭いから苦手で…」などと言ったのがきっかけで、臭いが気になり食べれなくなったということもあります。筆者の場合はイクラがそうでした。昔は好きだったのですが、母親がイクラの食感が苦手と話したあとに気になり始めて、しばらくの間食べることができなくなりました。親の言葉は子どもに大きく影響するので、マイナスな要素を含んだ言葉は控えましょう。
③食に関わる
おすすめは家庭菜園などで一緒に野菜を育ててみることです。毎日水やりをして収穫した野菜を使って料理すると、子どもも喜んで食べてくれそうですよね。育てるのが難しければ、スーパーに行って一緒に食材を選んだり、図鑑で学んだり、食事の準備を手伝わせるのもいいかもしれません。
味覚は成長とともに変化
せっかく作った料理を食べてくれないのは親としてもショックですし、怒りたくなるかもしれません。
しかしそこは抑えてください。皆さんは今の好物は昔から好きでしたか?例えばゴーヤなど、子どもの嫌いな食べ物ランキング上位の常連ですが、大人になるにつれ、ゴーヤの独特の苦みが好きになった人も多いのではないでしょうか。
味覚は年を取るごとに様々な味を経験することでも、新たな「好き」を発見することもできるんです。今子どもの好き嫌いが激しくても、まずは子どもが「食べることが好き」と思えるように楽しい食卓を心がけてください。そうすればご飯の美味しさも倍増しますし、そこから食の経験が広がる土台作りにもなります。