はじめに
お子さんの健やかな成長と明るい未来を願わない親はいません。
義務教育で約束された中学校までは公立で十分、しかしながら私学の先見的な教育にも期待したい。
そんな思いを同時に実現できる教育の場として、公立の中高一貫校が注目されているのも事実です。
やがて来る高校受験を前倒しすると考えても、適性試験や作文など総合的な内容で判断される一貫校の試験スタイルは魅力があるのかもしれません。
前回、一般的な公立中高一貫校の受験形態や準備について触れたところですが、受験にあたってもっと身近に気をつけるべき点はないか、お役に立ちそうなヒントを交えながら、掘り下げたいと思います。
中高一貫校の入試を突破するために…… 子どもに寄り添い、絆を深めよう
適性試験を主とする公立一貫校の受験については、学習塾の利用も効果的であるとお話ししました。お子さんが自主的に勉強のスケジューリングをするには難しい年齢である事や、限られた時間の中で効率よく実のある勉強を進めていくうえでは、費用を捻出してでも大変意味のあることだと思います。しかし一方で、家庭での細かなコミュニケーションも必要であるとお伝えしたつもりです。
塾では膨大な量の課題が出されることを、予め想定しなければなりません。当然、行き詰まったり、課題を消化することばかりに必死で受験する本来の意味すら、見失いかねない状態になるかもしれません。
一番の味方、協力者は家族です。どうか塾に任せっきりにならないよう、お子さんを注意深く見守り、助けてあげて下さい。単純なテストの丸付け、捉え方の相違を一緒になって考えてみるだけでも子どものモチベーションは違ってくるでしょう。まだまだ素直な小学生なのですから、単純にクリアできたことの喜びや、親に褒められることで生まれる達成感はダイレクトに伝わるものと思います。
適性試験は、学校教育の中の総合的な学習に共通するもので、内容が非常に多岐にわたるだけでなく、個々の感じ方や解決力なども採点の基準となり得ます。
過去のデータから出される問題や模範解答はあっても、100%の正しい回答ではないところに、この試験の難しさもあるのですが、それだけに自分の子どもの良い部分を最大限に引き出してあげられるのは、親の成すべき努めかもしれません。
中高一貫校の入試を乗り切るために…… たまにはリフレッシュを
小学校生活の中では、文字を読む・書く、物事を観察する、見聞きした知識を文章にまとめるといった作業を、繰り返し行いますね。当たり前のようですが、日々の学習の中でも上手に文章としてまとめられる力や言葉に出して説明する力には個人差があるものです。
受験に際してその力を伸ばす学習を進めていくことはもちろんですが、疑似体験としてではなく、実際に身を持って体験できた事の記憶や感覚に勝るものはありません。
親にできるもう一つの事として、お子さんに息抜きの場を持たせてあげて下さい。できればご一緒に博物館や水族館など、目で見たり体験したりできる場所がおすすめです。連休が取れるなら、自然の中に身を置いて過ごす時間も、お子さんにとっては有意義なものかもしれません。
中高一貫校に合格しても、そこで燃え尽きずにいてほしい…… 細く長い意欲を育てよう
費用の面や、学校の特色を生かしたオリジナリティーあふれるユニークな学習など、中高一貫校の人気が高まる裏には様々な理由があります。同時に、小学校の学習が普通にできているお子さんなら、合格のチャンスは誰にでもあると言えます。
理由はそれぞれあるにせよ、みんな一生懸命に努力して試験のその日に備えているわけですが、いざ合格となった時点で、その勉強に終わりがくるわけではありません。
実際に中学生活が始まると途端に意欲が薄れ、漫然と日々を過ごすようになるお子さんがいないとは言い切れませんし、せっかく努力して入学したのに高校ではまた別の道へ進んでしまう例だってあります。
また中高一貫とはいえ、高校に上がる時点では、何らかのテストや課題はあるものです。6年間という息の長い学校生活が充実したものとなるよう、受験までの時間の中で意識づけしていくことも大切でしょう。
中高一貫校の試験に落ちてしまった…… 結果を導き出せなかった時に
“合格までの道のり”をテーマにしていますが、希望する良い結果が全員に訪れるわけではありません。結果は神のみぞ知るとは言わないまでも、不合格の判定を受け取る場合のことも、頭の隅に置いておいて欲しいのです。合格しても不合格であっても、第一にお子さんの気持ちを考えてあげて下さい。
オリンピックで結果を残すアスリートは、勝つためのイメージトレーニングも欠かさないといいます。勉学とスポーツの差はあっても、自分で努力した分は本人にすべて返ってくるということでしょうか。全力で走り切ったお子さんほど、達成感というよりショックの方が大きいものです。
どんなに強い心を持ったお子さんでも、酷な判定に納得できない気持ちで一杯になるでしょう。そんな時も親や兄弟で認め合い、心の通ったケアをしてほしいと思います。
おわりに
人生の中で、いわゆる“試験”というものはどのくらいあるのでしょうか?
あなたのお子さんが、周りより少しだけ早くその試練に向かってがんばろうとしているなら、ありふれた日常も勉強の一つと考え、楽しみながら学習に取り組めるようフォローしてあげたいものですね。
強い心と幅の広い想像力。中高一貫校の求める人材は、そういったお子さんかもしれません。