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きっと役立つ‼若い夫婦のための教育書⑤

20年後には今ある職業の50%はない?

2013年にオックスフォード大学のオズボーン博士が書いた論文「未来の雇用」は、経済分野の大きなニュースになりました。その内容は、今後20年間で現在あるアメリカの職業の50%以上はコンピュータに代替される可能性がある、というものだったからです。

 

この論文は私たちに、子どもの教育について考える重要な示唆を与えているように思われます。私たちがわが子の教育を考えるときに忘れてならないことは、これから子どもたちが生きる社会や世界はこれまで私たちが生きた社会や世界ではない、という厳然たる事実についてです。私たちは子どもたちに、これからの時代を生きる力、将来の社会を生き抜く力を授けなければなりません。

 

 

OECD(経済協力開発機構)は、これからの国際社会で必要なコンピテンシー(能力)を「キー・コンピテンシ―」(翻訳は『国際標準の学力』)と呼んでいます。その内容は、私たち日本人がこれまで考えてきた「学力」とはたいへん異なる能力を意味しています。 現在わが国の義務教育・高等教育などで進められている教育制度や教育内容の改革は、この「キー・コンピテンシー」を基盤にしてなされているものです。

 

次の時代を生きる力の基本は何か?

では、これからの時代を生きる子どもたちにはどのような力が必要なのでしょうか?

 

その問いに対する具体的な答えのひとつが、今回紹介する『子どもに伝えたい〈三つの力〉』(斎藤孝著 日本放送出版協会/刊 2001@970円+税)です。

 

子どもに伝えたい「三つの力」―生きる力を鍛える (NHKブックス)

 

この本は、わが国が「学習指導要領」に初めて「総合的な学習の時間」を位置づけた頃に出版されました。

著者は、明治大学の斎藤孝教授です。現在ではテレビのコメンテーターとしても有名な著者の初期の意欲作です。15年前に出版された本ですが、その知見や主張の輝きは今も衰えていません。

 

筆者の提言する、子どもに伝えたい力の基本は、〈コメント力(要約力・質問力)〉〈段取り力〉〈まねる盗む力〉という「三つの力」です。

この本は、子どもたちの生きる力を鍛えるために、子どもに伝えるべき力を明確化し、学習者がどのような課題意識を持って学習に臨めばよいのかを具体化しています。

 

頭の中で物事を整理して人に伝えようとしたり、人任せにするのでなく自分で企画や製作を段取りしたり、知識や技術を積極的に盗もうとしたりする学習、それこそが次の時代を生きる力の基本なのだ、と筆者は述べています。

 

目的意識のない練習や学習が、のちに高い効果を発揮することはまずありません。もしあなたが学生時代に学んだ「総合学習」が、ただいろいろと作業や活動をしただけの時間だったなあと印象に残っているのなら、あなたは、上述の「三つの力」を鍛えることを教えられなかったのかもしれません。あるいはあなたが無自覚だったのかもしれません。

 

これからの子どもたちには「三つの力」を自覚させ、将来の社会で通用する「学力」を身に付けさせるようにしたいものです。

(浩)

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