» コラム

明日へ届ける手紙⑬「新型コロナウイルス(COVID-19)」(中)

 

 ■ 社会による学習支援と学力保障

 

 2月27日、政府の新型コロナウイルス対策本部による休校要請に即座に対応したのがNHKである。NHK公式サイト内に「おうちで学ぼう!NHK for School」を立ち上げるとともにEテレサブチャンネル(023チャンネル)で子ども番組を月から金曜日に午前10時25分から正午と午後1時05分から2時まで放送を始めた。

 文部科学省は、在宅学習に役立つウェブサイトへのリンクをまとめたポータルサイト「子供の学び応援サイト」を開設。産業経済省も「未来の教室~learning innovation~」内にポータルサイト「学びを止めない未来の教室」を開設した。

 

 一方企業では、ヤフーが子ども向けポータルサイト「Yahoo!きっず」内に小学生用の学習支援サイト「ヤフーきっず おうち学校」を、LINEが公式アカウント「新型肺炎休校サポートLINEみらい財団」を開設した。また、リクルートマーケティングパートナーズはオンライン学習サービス「スタディアプリ」の全機能を4月末まで自治体向けに提供。シャープマーケティングジャパンは個別学習支援システム「インタラクティブスタディ」のオンライン学習教材を臨時休校の期間、教育委員会または学校長が申し込むことを条件に無償で提供した。また印刷教材では、ベネッセコーポレーションは、「進研ゼミ」から教材冊子『3学期に学ぶ主な教科の総集編』30万冊(3月上旬時点)を無料で提供した。

 

 文部科学省は3月17日、4月16日に実施予定だった「全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)」を延期すると発表した。その後、本年度は中止することを決めた。

 

 次に私が着目したのは、学校が直接、児童生徒にオンライン授業などを提供する事例はあるのか、ということだった。

 

 ■ 学校による学習支援と学力保障

 

 学校によるオンライン授業やテレビ授業の提供事例は、ニュース記事にも新聞記事でもなかなか探し出せなかった。ようやく見つけた記事からいくつか特徴的なものを取り上げる。

 

 

 青森県東北町立のある中学校は、未履修内容を補うために同町のケーブルテレビを活用して英語と数学のテレビ授業を実施した。新潟市立の中等教育学校は臨時休校中、オンライン学習支援サービスを活用して、5教科を中心に毎日、生徒に学習課題を配信した。静岡市の私立中高一貫校では、自宅にいる生徒がタブレット端末で授業を受ける「オンライン学校」を始め、休校期間中続けた。岐阜県多治見市の私立中学校は休校中、平日1日3時限、5教科の授業を受けるインターネットによる遠隔授業を始めた。京都府舞鶴市の私立高校は、1、2年生で化学や古典を選択している生徒向けにオンライン授業を2週間程度実施した。

 

 これらの事例から推測すると、全国の公立小中学校および高校では、児童生徒にオンライン授業などの提供はほとんどされていないと思われる。また、オンライン授業を提供できる環境の整った学校があっても、近隣の学校と歩調を合わせたり教育委員会から許可がでなかったりしたのかもしれない。4月22日のNHK報道によると、臨時休校中に学校がオンライン指導を行った自治体は全国で5%(文部科学省調査)にすぎない。4月下旬時点で都市部を中心に全国の小中学校は、新学期の授業再開が5月まで延期されている学校が多い。児童生徒の学習支援と学力保障の観点から、この2か月間の休校は今後、どのように改善されるべきなのかを考えてみたい。

 

 ■ 教訓から学ぶ今後の教育体制

 

 今回の新型コロナウイルス対策で、社会インフラの課題としてにわかに注目を浴びたことに、企業や会社でのテレワークや医療のオンライン診療の必要性があった。私は、学校のオンライン授業の整備不足ももっと指摘されるべきではないか、と思っている。大学では現在、新入生は在宅でオンライン授業を受けており、また、その準備を急いでいる大学は多い。ところが前述したように、公立小中学校はもちろん公立高校においても、オンライン授業を行い自宅で学習させている学校は一部を除いてほとんど見かけない。

 

 これまでも毎年、インフルエンザが流行する時季には、全国の学校で学級・学年閉鎖などが行われている。通常、感染者が少ない初期に学級閉鎖に踏み切る学校はない。結果として、感染が拡大してから閉鎖することになる。では、感染が拡大しつつある期間や学級閉鎖期間で遅れた学習内容を、学校はどのように補完しているかといえば、閉鎖解除後の放課後などに無理な日程で特別校時を組み必要最小限の補習を行うのが実情である。しかし、今回のような新型感染症による長期休業には、補習だけで対応することは困難である。

 

 緊急事態宣言が段階的に解除され社会機能が回復してくれば、私たちはもっとオンライン授業をはじめとする学校の授業のICT化推進に積極的にコミットする必要があるのではないか。それは、感染拡大の第二波、第三波が訪れ再び学校が臨時休校になることをも想定した喫緊の課題でもあるからだ。

 

 今回の臨時休校を教訓として学校のICT化を一気に推進させて「オンライン授業」や「テレビ授業」を広く活用すれば、今後、児童生徒は自宅や病室や施設で、遠隔授業を受けながら学習を進めたり学習の遅れを取り戻したりすることができるようになる。また、今回の臨時休校中に一部の学校で行われていたように「オンライン朝の会」や「オンライン・ホームルーム」で教員が児童生徒の心身の健康状態を遠隔で確認したり助言したりできる利点もある。このような通信技術を学校が平常時から習熟しておけば、今後起こり得る新型感染症や大規模災害などの非常時には、「遠隔教育」は有効な代替手段として機能するだろう。また併行して、行政と各学校をテレビ会議で繋いだり、職員会議をウェブ会議で行ったりすることも、自治体や学校は視野に入れ危機管理の準備を早急に始めるべきだろう。

 

 今回の新型コロナウイルス感染症は、我が国の社会インフラでなにが強靭で、なにが脆弱なのかを、はしなくも浮き彫りにした。そして、学校のICT化は社会インフラとしてすでに必要不可欠になっていることを、私たちは改めて思い知らされた。およそ10年ごとに繰り返されるとも言われる深刻な新型感染症に対処するために、「学校のICT化」の整備は急務である。(続く)

(浩)

スポンサードリンク