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学校の四季㉘「家庭学習3つのコツ」(上)

 

■ 大学生は「グライダー人間」

 

 37年前、「学校はグライダー人間の訓練所である。飛行機人間はつくらない」と書いたのは、英文学者で大学教授だった外山滋比古である。その意味するところは、当時の大学教育の問題点を、独力では知識を得ることができず自力では飛び上がることができない、まるでグライダーのような人間をつくっていると比喩したのである。そして、学生にとって大事なのは、自力でテーマや論文主題を見つけ出し研究できるような「グライダー兼飛行機人間」になることだと言い、学生が創造的な思考を発揮するにはどうすればよいのかを、その著書で考察した。

 

 著者は2020年7月に鬼籍に入ったが、1983年に書かれたこの『思考の整理学』はロングセラーとなり、時代を超えて今も知的創造のヒントを求める多くの大学生に読み継がれている。

 

■ 高校生の「自己学習力」

 

 じつは現代でも「学校は知識を教えることに熱心になりがちで、考え方や学び方を学ばせることが疎かになっている」とはよく聞かれる議論である。学校は、自立した人間を育てるために知識を与えて生徒の表現力や思考力を育もうとしているのだが、その過程で生徒の「自己学習力」はそっちのけにして「知識伝達」に重点がおかれてしまうことがよくあり、そのことをかつて私も何度か自省した経験がある。もとから「自己学習力」が備わっている生徒は少ないから、学校はその能力をこそ意図的・計画的に育成する方策を立てるべきなのだが、それがうまく機能していないのである。

 

 国立青少年教育振興機構が2016年度に実施した『高校生の勉強と生活に関する意識調査(国際比較調査)』では、日本の高校生が「平日に学校の宿題をする時間」は、「しない」が11.2%、「1時間以内」が51.1%で、これらを合わせた層の割合は、米国の高校生より30.1㌽、中国の高校生より37.4㌽も高いことがわかった。また、「平日に学校の授業と宿題以外に、どのくらい勉強しますか(塾なども含む)」では、「しない」が、米国の高校生は17.7%、中国の高校生は7.6%だったのに対して、日本の高校生は24.2%と多かった。いずれの結果も、日本の高校生の勉強時間が少ないことを明らかにする結果だった。

 

 こう見てみると、将来の日本に悲観的な思いを感じてしまうが、2009年に(財)日本青少年研究所が実施した『高校生の勉強に関する調査』と前述の結果とを経年比較すると、別の見方も浮かび上がる。結論だけ書くと、2016年の調査と2009年の調査とを比べると日本の高校生は、学校の宿題やそれ以外に勉強を「しない」と回答した割合が1割以上低くなっており、反対に「2時間以上」勉強すると回答した者の割合が高くなっている。つまり、日本の高校生の勉強時間は改善している。とはいえ、これらの結果をどう解釈するかは意見が分かれるところだろう。次回の調査結果がどのようになっているのか興味深い。

 

 この調査で「勉強時間」以外に私が着目するのは、高校生の「勉強の仕方」である。日本の高校生は「自己学習力」に関係する能力、たとえば「自分で整理しながら勉強する」「できるだけ自分で考えようとする」「勉強したものを実際に応用してみる」「教わったことをほかの方法でもやってみる」という割合が、米国や中国の高校生と比べて明らかに低い。前述した比喩でいうと、「飛行機人間」に必要とされる能力が乏しいことが問題だと思うのである。

 

■ 小中学生の「自学自習力」

 

 基礎的学習力や自己学習力を身に付けさせるために、小中学校段階で家庭学習をどのように習慣づけたらよいのかを、私は考えたことがある。中学校では、5教科で授業用のノートとは別に自主学習用の「サブノート」を作らせることが多い。そして小学校では、「自学自習ノート」という1冊の自主学習用ノートを作らせて、そのノートに各教科の自主学習をさせることが多い。

 

 この「自学自習ノート」は、昔から「自学自習力」の育成が重要だと考えていた教師によって各地で取り組まれていた教育実践だったが、全国規模で広がったのは、13年前のある出来事がきっかけである。2007年に実施された文科省の第1回「全国学力・学習状況調査」(いわゆる「全国学力テスト」)で、秋田県の小学校6年生と中学校3年生の国語と算数・数学の学力が優れていることが報告された。その翌年も同様の結果が出たことで、秋田県の小中学生の学力が高い理由のひとつとして、秋田県内の小学校で日常的に活用されていた「自学自習ノート」が一躍注目されるようになったのだ。

 

 次回は、この「自学自習ノート」などを活用して小学生から「自学自習力」を育成する方策について具体的に述べたい。(続く)

(浩)

 

※ 本稿で紹介した書籍は以下のとおりです。

『思考の整理学』外山滋比古・著、ちくま文庫、1986.4

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