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学校の四季㉗「夏休みの自由研究」

 

■ 体育館の夏休み作品展

 

 校庭を取り囲む緑地帯に響いていたクマゼミやミンミンゼミ、アブラゼミの蝉時雨が、やがてツクツクボウシの鳴き声に代わるころ、夏休みが終わる。夏休みが終わると体育館は暫くの間、体育の授業も夜間の社会体育への貸し出しも行わず閉館になる。夏休み期間に子供たちが作った工作や自由研究を展示する「夏休み作品展」を開く準備をするためである。

 

 まず、5、6年生が体育館を大掃除してフロアにシートを敷く。そのあと、学年別に区画を決め、その区画ごとに、たくさんのミカンコンテナを逆さに置いて土台にし、その上にベニヤ板のパネルを敷いた即席の「工作展示台」を設置する。また、自由研究を掲示するために展示用ボードも立てる。その後、各学年エリアに全校児童が作品を展示する。それを、児童が学年の枠を超えて互いに見学し参考にする。加えて、児童が招待状を作り、保護者や地域の方々にも見に来ていただくのだ。

 

 展示される作品は多彩である。まず目につくのが、工作作品だ。かつては、工作作品は自由度が高く、幅も高さも1メートル越えという大作も少なくなかった。しかし最近では、企業や団体が主催する各種工作コンクールの募集がたくさんあり、その規格に応じた小振りの作品がほとんどである。規格外では審査に通らないからである。

 

 小学生の工作作品は、色彩の豊かさや造形の斬新さで中学生の発想を上回ることが多い。それが、小学生の作品展が保護者や大人に好まれる理由のひとつなのだろう。小学生の作品は可愛くて、楽しくて、そして驚きに満ちている。

 

■ 小学生のすごい工作や自由研究

 

 今年は夏休み期間が極端に短いから、夏休みの自由課題を出さない学校がほとんどだと思う。だから例年、各学校で賑わう工作も自由研究も今年はほとんど見られないのかもしれない。それならば、来年に向けて親子共々モチベーションアップのために、これまで話題になった小学生の作品を振り返っていくつか紹介してみよう。

 

■ (その1)特許を取得した「工作」

 

 2006年、国内で初めて小学生が特許をとり評判になった作品がある。「忘れ物防止装置・傘お化け」である。富山市の小学生が作ったこの作品は、「第41回富山県発明とくふう展」で最優秀賞を受賞し、関係者に勧められて2003年に特許出願、06年に登録された。

 

 梅雨の時季、出先でうっかり傘を置き忘れた経験がある人は多いのではないだろうか。この小学生は、「傘の忘れ物が多い」という新聞記事と、「止まっているものが突然動くと人間は驚く」という経験を組み合わせて、この発明をした。発明したビニール傘は、建物の出入り口付近に置いておくと人が通るたびにセンサーが反応して、ビニール傘が数秒間ゆっくりと開閉する仕組みになっている。通行人に自分の傘を忘れていないか注意を促すのである。

 

 愛知県安城市の小学生が発明し2015年に特許を取得した「空き缶自動分別機」は、磁石の力を利用してスチール缶とアルミ缶を自動分別するごみ箱である。小学校5年生のときの夏休みの自由研究だという。

 

 2019年と20年には、神奈川県平塚市と相模原市の小学生が「洗たくバサミまとまるくん」と「からまないハンガー」で相次いで特許を取得した。「洗たくバサミまとまるくん」は夏休みの工作で、容器に洗濯ばさみを入れると自動的に同じ向きで収納されるという工作だ。「からまないハンガー」は、物干しにかけたハンガーが風や揺れの影響でズボンかけ部分が絡みやすいのを改良した工作である。ハンガーの上部と下部に磁石の付いた薄型クリップを取り付けた。これでハンガーが絡みにくくなり、しかも片付けるときにはハンガー同士が磁石でくっついて整理整頓しやすくなる。なんと小学校4年生の作品である。

 

■ (その2)市販本として出版された「自由研究」

 

 2019年に出版された『桃太郎は盗人なのか?―「桃太郎」から考える鬼の正体―』の作者は千葉県袖ケ浦市の小学生で、この研究テーマを3年間継続調査した自由研究である。『2018年図書館を使った調べる学習コンクール』(図書館振興財団主催)で文部科学大臣賞を受賞した。この小学生は、地元の図書館で「桃太郎」関係本を読み比べるだけでなく、夏休みには、母親に相談して、「桃太郎」の文献を多く所蔵する岐阜県の図書館にまで出向いて調査研究を続けた。読み比べた本は200冊を超える。その研究内容の完成度の高さが認められ、異例の市販本として出版された。

 

 特筆すべきは、袖ケ浦市が、『図書館を使った調べる学習コンクール』の上位入賞数で20年間連続して全国一を獲得しているという受賞歴である。地域図書館の取り組みや学校図書館の活動が、受賞者だけでなくこの地域に学ぶ小中学生にもたらしている自信や恩恵は計り知れないと、私は思う。

 

 いかがでしたか。「たかが小学生の工作や自由研究」などと侮ってはいけない、そう再認識された方も多いのではないだろうか。また、紹介した作品から、来年の自由研究のヒントを見つけた人もいるかもしれない。これらの工作や自由研究が、その小学生が住む地域社会に及ぼした明るい影響も大きいと、私は思う。まさに「一隅を照らす これすなわち国宝なり」である。

(浩)

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