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学校の四季㉔「学校の研修」(中)

 

 ■ 「学校の情報化」の必要性

 

 12月のコラムを送信した翌朝、新聞の第1面トップに、「国は、全国の小中学校で高速・大容量通信を整備したうえで、児童・生徒に『1人1台』の学習用パソコンかタブレット型端末を無償で提供する方針を固めた」(2019年11月27日付朝刊、読売新聞大阪本社版)という記事が掲載された。その後12月13日に政府は、令和元年度補正予算案を閣議決定し、学校のICT化の整備費として2318億円が正式に計上された。

  また、その後の記事によれば、この事業は24年度に完了を予定しており、総事業費は4000億~5000憶円を見込んでいるという。

 

 生徒が1人1台のタブレット型端末を使っている公立中学校は少ない。前回コラムで紹介した大学の附属中学校や第12回のコラムで紹介した地方公共団体は例外なのだ。多くの地方公共団体には現在、学校にそのような通信設備や機器を導入する財政的余裕はないのである。つまり、このままでは我が国は学校の情報化でICT先進諸外国の後塵を拝することになるのではないかという国の強い危機感の表れが、今回の補正予算方針の本質だと思われる。

 

 かつてCAI教育を行っていた時代にはまだ、ハード面でもソフト面でも国産の機器や技術が欧米製品と互角に競争していた。しかし現代では、機器はもちろん、システムやソフトウエアに至るまで米国などで開発された製品に圧倒されている。また最近は中国製品の台頭も著しい。

 

 前回紹介した中学校の公開研修会で使われていた機器もアプリも、そのほとんどは米国製だ。なかでも重要なのはICTの基幹技術をGAFA(Google,Apple,Facebook,Amazon)など大手IT企業が独占しつつあることだ。時価総額で我が国最大の企業であるトヨタの豊田章男社長が経営説明で、現代を自動車業界の「100年に1度の大変革時代」だと言い、海外の大手自動車会社とともにGAFAなど大手IT企業を念頭に「勝つか負けるかではなく生きるか死ぬかの競争が始まっている」とまで語らしめた所以である。

 

 今後、我が国のICT教育はIT先進国の教育と互角に競争していけるのだろうか。問題は、機器や設備だけではない。ICT教育を教える教員研修や教員養成の問題でもある。

 

 ■ 教員研修と授業研究

 

 公立小中学校は通常、年間10回程度の教員研修を行う。「教育課程研修」「人権教育研修」「生徒指導研修」「不登校問題研修」「カウンセリング研修」「教育課題研修」など当該校に喫緊の課題や現代的な教育課題について研修を行い知見や実践力を高めるのである。最近の教育課題でいえば、「道徳教育」「外国語(英語)教育」「環境教育」「ICT教育」「プログラミング教育」が重要な研修課題といえるのではないか。

 

 このほかに保護者や部外者にはあまり知られていないが、学校では「授業研究」という研修が行われている。これは前述した職員研修とは少し趣が異なる。教室で行われる「授業」そのものを研究材料にして研修を行うのが「授業研究」で、その実施頻度は学校によって違いが大きく、年に数回の学校もあれば数十回行われる学校もある。前回紹介した中学校の「公開研修会」もこの「授業研究」の一環である。

 

 「授業研究」という言葉は一般にはあまり馴染みのない言葉だと思うが、教育関係者の間では頻繁に用いられる専門用語(英語ではLesson studyという)である。とくに日本の教育研究者にとってはこの言葉は誇らしい用語で、諸外国には「授業研究」にあたる教育研究がなく日本独自の実践的な研究方法だったからだ。それが今では外国の教育界にも取り入れられるようになっている。

 

 ■ ICT授業研修の重要性

 

 「ICT教育」や「プログラミング教育」「外国語(英語)教育」など新しい教科領域の研修では、理論・実技研修をするとともに授業研究をすることが教員の実践力向上には欠かせない。知識・理論が理解できる能力と質の高い授業を成立させる技量とは異なる能力だからだ。

 

 前回述べた大学の附属中学校の事例のように、ICT授業研修が頻繁に開催され、ICTを活用した授業が日常的に行われることが望まれる。公教育で一定の教育水準を確保するという観点からいえば、全国どの地域においてもICTの活用こそ「同一水準」で行われるべきだと思うのである。(続く)

(浩)

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