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学校の四季⑰「学校のトイレ事情」

 

■ 問題行動を克服した中学校

 

 その中学校が校内暴力など生徒指導事案で苦労していたころ、校舎3階にあった3年生の教室の窓から中庭に向けてごみが投げ落とされるのが日常的になっており、その荒んだ光景は全校に暗い影を落としていた。

 

 学校はついに、新年度から3年生の教室を1階にある1年生の教室と振り返ることを決断した。そう決断した背景には、生徒指導が困難な中学校の多くはその対策として、1階に3年生、3階に1年生という教室配置をしていることがあった。教職員が集まる「職員室」や「事務室」は通常1、2階にあるため、こうすることで3年生に教職員の目が行き届きやすくなることや上級生による1年生へのからかいや授業妨害といった悪影響を抑止できることなどが期待された。

 

 しかし、この方針が伝わると猛反発したのは2年生である。やっと新年度から3階に行けると思っていた矢先にまた1階へ戻れというのだから無理もない。そこで教職員は2年生の学級委員や生徒会の新役員と協議を重ね、2年生の学年集会で、教室配置を変更する代わりにかねてから生徒から要望のあった1階トイレを全面改修することを明らかにした。しかも「便器はすべて洋式に替えどの学校よりも綺麗なトイレに改修する」と約束したのである。

 

 できあがったトイレは「デパートの化粧室」とまではいかなかったが、来校者に羨ましがられるほど綺麗なトイレになり新3年生の生徒たちも満足した。そして、この年度を境にしてその中学校の問題行動や生徒指導事案は激減した。

 

 ■ 不人気な学校のトイレ

 

 じつは学校のトイレほど、児童生徒や保護者に不人気な場所はない。トイレの個室の仕切りは不完全でドアの隙間から中が見えることすらある。便器も完全に二昔前の設備である。いちばんの不人気な理由は、「洋式便器が少ない」ことだ。学校によっては、児童生徒用のトイレに洋式便器がまったく設置されていないことも珍しくはないのである。

 

 かつて私が赴任した小学校も洋式トイレのない学校だった。私は校舎の耐震改修工事が実施されるときに、「各階のトイレに男女別に1個だけでもよいから洋式便器を設置してほしい」と主張した。ところが当初は、トイレ改修は耐震改修項目ではないことや洋式便器を入れるには現在の個室の面積がたりないためトイレの全面改修が必要になるという理由で話は進まなかった。

 

 ところが設計担当者が打ち合わせに学校を何度も訪れ、その都度トイレの実状を見るうちに考えを変えた。この校舎がつぎに大規模改修をするまで何十年かかるかわからないのである。今できることはしておきたいと彼はさまざまな折衝や調整を進めてくれた。最終的に、トイレのいちばん奥側にあった掃除用具庫のスペースを活用して各階に男女別に1個洋式トイレを設置することが決まった。

 

 完成後に私が1階の低学年のトイレを見に行ったとき、洋式トイレの前には順番を待つ児童の行列ができていた。あの担当者に見せてあげたいと私は思った。きっと喜んでくれたはずだ。

 

■ 全国の学校のトイレ状況

 

 現在、全国の小中学校のトイレの状況はどのようになっているのだろうか。平成28年に文部科学省が調査した結果が、文部科学省HPに公表されている。「公立小中学校施設のトイレの状況」(平成28年4月1日時点での調査)がそれである。

 

 その調査結果によると、全国の小中学校には約140万個のトイレ便器があり、そのうち洋式便器は約61万個(43.3%)、和式便器は約79万個(56.7%)となっている。

 学校設置者別(1799自治体別)の調査一覧表も掲載されており、各自治体の今後のトイレ便器の整備方針が記載されているので注目したい。整備方針は自治体ごとに異なり以下のように5分類されている。

① おおむね洋便器(洋式化率約90%以上)

② 各階に1個程度和便器を設置し、他は洋便器(洋式化率約80%以上)

③ 各トイレに1個程度和便器を設置し、他は洋便器(洋式化率約60%以上)

④ 洋便器と和便器を概ね半々程度に設置(洋式化率約50%)

⑤ その他(明確な方針がないなど)

 

 読者が、お住まいの自治体や子供たちが通う学校のトイレ状況とこの全国調査結果とを比較することで見つかる課題もあるのではないか。

 ガッコムでは、各学校の「口コミ・エリア情報」欄の「基本情報・施設」内に「トイレ」情報を記載できるようにしているので、こちらも活用いただければと思う。

(浩)

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