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学校の四季⑬「学校が受け継ぐ文化」

■ 学校は地域の文化拠点

 

 驚くかもしれないが、かつて「学校は地域の文化拠点だ」といわれた時代があった。日本の多くの地域に公民館も図書館も文化会館も、ましてやカルチャーセンターなどなかった時代のことだ。学校ではしばしば、地域住民も参加して伝統芸能の演奏や演舞が開かれたり、地域の伝統行事が催されたりした。現在でも、三番叟(さんばそう)や獅子舞など地域の民俗芸能を子どもたちが継承している学校が残っているが、それは稀な事例である。

 

 時代は変わった。もはや「学校は地域の文化拠点」ではなくなった。今年は明治元年から数えて150年。全国の学校ではこれから数年経てば創立150周年を迎える学校が次々と現れるだろう。その創立されたころの学校と現代の学校を比べると決定的に違うのは文化継承力や文化発信力ではないかと、私は思う。

 

 現代の学校は多様な時代の要請に対応することに注力し、相対的に学校の文化継承力や文化発信力は低下している。とはいえ、それでは学校の「文化力」が地域にとって必要なくなったのかといえば、決してそうではないだろう。地域の歴史や伝統を継承し発展させることはその地域にある公立小中学校の重要な役割であり使命でもある。そのため現在では行政が主導して、学校に地域学習を奨励したりその成果をかべ新聞やパネル発表で披露するコンクールを開催したりして、学校の文化力向上を後押ししている。

 

■ 地域とつながる環境学習

 

 かつて私が勤めた小学校は、校区にナショナルトラスト運動で環境保全に取り組んでいる海岸があった。私は自分の学校が行っている地域学習のモチベーションを高めるため、県外で同じように環境学習を行っている学校と交流できないかと考えた。そして探し出したのが近隣県にある川の環境学習に熱心に取り組んでいる小学校だった。

 

 私は早速、教務主任を連れてその学校を訪れた。その学校は長年、近くを流れる河川の調査研究に継続的に取り組んでいた。その環境学習は、校区の公民館、自然保護団体や大学研究者にも支援してもらっている本格的な活動だった。また、児童による調査研究の発表会は保護者だけにとどまらず地域住民にも公開されていて、地域に開かれた特色ある学校活動になっていた。

 

 研究主任や環境学習主任である4年生の担任教員と協議をし、私は相互交流の方法として「テレビ会議」を活用した調査研究の発表会はできないかと提案した。児童が互いに訪問し合うには両校は地理的に距離が遠すぎた。その点、「テレビ会議」なら相手校は校内のICT環境が整っており、こちらの学校が通信環境の整備をすれば実現可能だと考えたのだ。

 

 それから8か月後、テレビ会議システムを使った交流授業が行われたのは2月の寒波厳しい日の午後だった。相手校は4年生が、こちらは3、4年生が参加し合わせて200名の児童がテレビ会議で交流した。当校の3年生は環境学習で調べた海辺の水生生物について、4年生は海岸の清掃活動をとおして調査したごみ問題について研究発表した。当日の様子は、NHKの地方局やローカルテレビ局の定時ニュースでも取り上げられ、保護者や地域から大きな反響が学校に寄せられた。

 

 学校が地域に文化発信するときに大事なことは、あくまでも学校がその発信活動に主体的に取り組むことかつ学校独自の手法でアプローチすることではないかと、私は思う。外部からの依頼や要請を受け入れ学校の取組みを始めると、どうしても学校の主体性が保てなくなることがある。そのような活動や取組みは、学校が本来求める地域学習から程遠い単なるイベントになりがちで継続しないことが多い。

 

 あの厳寒の日に行った交流授業の取組みは、今はもう過去の記憶になった。けれどもあのとき発表し交流した調査活動は、両校ともその後も在校生に代々引き継がれ今もこの地域学習は続けられている。

(浩)

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