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長さや纏め方に制限?データで見る公立中学校の髪型校則事情


近年日本は韓国ブームによって、韓国風のメイクや髪型をチョイスする人をよく見かけます。 韓国風にすることで垢抜けた感じが出て、テンション上がりますよね。このように、 時代の流れに伴って流行りもどんどん変わってきます。


しかし、学校では“校則”によってそのような流行に乗りにくくなっています。皆さんも、「ブラック校則」として頭髪や下着の色などが問題視されている事はご存知だと思います。今回のコラムでは“髪型の校則”についてご紹介します。


【目次】
・男女で違う髪の長さの決まり
・前髪の長さを制限?
・校則の成り立ちと変わらない理由
・髪の結び方に制約
・最後に



■ 男女で違う髪の長さの決まり
 皆さんは髪の長さに制約がある学校が存在することをご存知ですか?ガッコムのデータによって、学校ごとに長さに関する決まりがバラバラなことが判明しました。しかも、その制約は男女でも大きく差があったのです。



 上の地図は都道府県別に、髪の長さが自由である学校の割合を男女で比較したものです。Nは回答のあった学校数を表しています。女子生徒は自由な学校が多いですが、男子生徒は地域によってかなり差があります。髪が耳にかかる程度の長さである髪型は男性にもたくさんありますが、それを禁止している学校が約半分も存在するのです。
また、女性の髪の長さに対しても無制限ではなく、「(下ろした状態の)ロング・セミロングは禁止」という学校が全国で約半分も存在していました。ジェンダーレスで個性を大切にする動きがある今、男女で髪型を制限してしまうのは時代遅れな感じがしますね。

■ 前髪の長さを制限?
 さらに、前髪の長さに制限のある学校も多く存在します。図3は前髪の長さが自由な学校の割合を都道府県別に表したものです。東京も55%前後の学校に前髪への制限があるという結果でした。

 前髪の制限内容としては「額に収まる長さ」「眉毛まで」「目にかからない長さ」の3つがあります。より細かい学校だと「前髪を押さえた状態で」という条件をつけて規定内の長さかを判断しているようですね。

 

 では、前髪が自由な学校が多い都道府県はどこなのか、ランキングで見てみましょう。
長野、京都、滋賀は約9割が自由であることが分かります。東京や大阪が入っていないのは意外な気がしますが、皆さんはどう感じましたか?



 

 次は逆に前髪への制限のある学校が多い都道府県はどこなのかを見てみましょう。
 宮崎、佐賀、熊本と九州が多いですね。関東である栃木県も3位に入っています。


 さらに、先ほど紹介した3つの制限内容ごとに見てみましょう。今回はそれぞれの制限が校則として存在する学校が最も多い都道府県だけご紹介します。



上の表を見ると、一番厳しい制限である「眉毛まで」でないといけない学校は、先ほど校則がある学校が多い都道府県で2位だった宮崎県のようですね。他二つの校則内容の場合は、男子は先ほどのランキングでも1位であった秋田県で、女子は佐賀と山形でした。つまり、厳しさでいうと秋田県ではなく宮崎県が1位と言えます。

 前髪について、様々なデータを見てみたことで、全体的に見ると中部や近畿に比較的自由な学校が多く、東北・九州に比較的厳しい学校の多いことが分かりました。

■ 校則の成り立ちと変わらない理由
 なぜ、校則で髪の長さまで制約される必要があるのでしょうか。成り立ちや校則の仕組みを見て、考えてみましょう。

  ▶校則ができるまで
 秦政春によると、校則は文部科学省が1873年に発行した17条の「小学生徒心得」が元となっていると言われています(森1991, p.23)。しかし松野修によると、生徒心得は県が独自に作っているところもあり確認できるだけでも50種類はあるそうです(松野1986, p.12)。秦によると、今のような厳しい校則になったきっかけは、1965年以降にあった非行少年の第3ピークです。校内暴力が頻発し、それらを抑制・防止するために細かくなりました(秦1991,p.23)。また、校則は学校単位で制定されるようになったため学校によって異なるようです(松野1986,p12)。つまり、「校則は、いわゆる生徒心得として標準的な生徒としてのありかたを示したものではない (秦1991,p.23)」のです。ですから、「ブラック校則」といわれるぐらい、おかしな校則が残っているわけですね。

  ▶髪への規則の地域差がある訳
 森杉夫によると、明治前期に政府が洋風を取り入れるため、男性を対象とした断髪令を出しました(森1979,p.3)。半強制的に髷(まげ)をやめさせられたこともあり、急速に普及しました。一方女性は断髪を禁止されていました(同上,p.7)。この名残から男女で基準が異なる可能性があります。
  また、横山友子による1903~1933の女性雑誌の分析において、読者の所在地が関東・近畿・中部で多かったことが分かりました(横山2019,p.54)。これは、校則が比較的緩い地域とマッチします。頭髪やパーマなどが以前から普及していた地域だからこそ、認められる範囲が比較的広いのかもしれません。

  ▶校則が変わらない理由
 校則がおかしいと言われながらも、なかなか変わらないのはどうしてなのでしょう。寺子屋時代から「規則は最低限にするべきだ」という意見はあったそうですが、なかなか反映されませんでした(松野1986,p.13)。変わらない原因として考えられるのは「裁判所による判断基準が厳しい」という点が挙げられます。
 舟越耿一(1993)によると、裁判所が“その校則を変えるべきかどうか“を判決する上での判断材料は「校則による効果作用」「その効果と目的との関連性」「校則が社会の常識と合っているか」の三つしかなく(p.44)、これを完全否定できなければならなりません。しかし、どんな校則でもその意義を完全否定するのはかなり難しく、人権を犯すような場合でさえ厳しいのです(同上,p.45)。「中学校長は教育の実現のため生徒を起立する校則を定める包括的機能を有する(同上,p.47)」とされており、“著しく”不合理でない限り断ずることはできないとして、過去の校則判決は見送りになってきています(同上,p47)。
 実際に、「事件に巻き込まれる可能性が高まるから(『イット!』2020,第2段落)」という理由からツーブロックが禁止されているという校則がニュースになりました。感覚的に「おかしい」と思っても論理的に説明するとなると難しそうですね。

■ 髪の結び方に制約
 学校によっては、いくつか髪の結び方に条件が存在します。今回は、認められている割合が高い地域と低い地域との差 (※以降、地域格差と表す) が大きい結び方トップ3をご紹介します。
※地域格差の大きさは各都道府県の認められていると回答した割合の標準偏差を髪型ごとに求め、その値の大きさで判断しています。


  ▶3位 サイドテール(髪を横に流して結ぶ)
 普通によく女性がやるお姉さんっぽい髪型ですが、認められていない学校(色が薄い部分)が結構ありますね。9割の学校が認めている県もある一方、9割の学校が認めていない県もありました。結び方も、九州や東北が比較的厳しい傾向にあることが分かります。



  ▶2位 ポニーテール
 驚かれた方もいらっしゃると思いますが、2位はポニーテールでした。誰もがやったことがあるであろう代表的な結び方である感覚でしたが、地域によってはそうではないのかもしれませんね。



  ▶1位 お団子結び
 厳しさ度合いの地域格差が大きい結び方ランキング第1位は「お団子」でした。他の二つよりもはっきりとしているのが地図から分かりますね。認めている学校が一番多いのは沖縄の96.9%、一番少ないのは愛媛の10.8%でした。


 


■ 最後に
 いかがでしたでしょうか。今回は髪型の校則の中でも、長さと結び方に着目しました。ガッコムのデータを分析することで、地域や男女で差があるということがお分かりになられたと思います。ガッコムでは、公立小中学校に関する情報をアンケート形式で集めています。HPにてぜひ地元の学校に関する情報提供にご協力ください。



※本記事は、ガッコムが保有する学校レポーター情報(学校毎の200項目以上のアンケートに対して、全国の利用者の皆様から善意でいただいた回答)をエリア単位で集計したデータを使用しています(2022年9月時点)。そのため、中には実情とは異なる回答が含まれている場合もございます。予めご了承ください。

※学校毎のデータは、ガッコムの各学校ページ上でご確認いただけます。未回答項目の正しい回答をご存知の方、または回答済項目の誤りを見つけた方は、ガッコム上で簡単に投稿・修正が可能ですので、情報提供にご協力いただけますと幸いです。


 

【参考文献】

イット!,2020,「都立高校の校則で“ツーブロック禁止”が波紋…理由は「事件に遭うから」?不合理にも思える“グラック校則”の是非」FNNプライムオンライン(2022年9月3日取得, https://www.fnn.jp/articles/-/63611?display=full).

秦政春,1991「校則と子ども:中学校を中心として」日本教育経営学会紀要33:21-30.

舟越耿一,1993「校則制定の根拠とその範囲」長崎大学教育学部社会科学論叢45:43-54.

松野修,1986「明治前期における児童管理の変遷―小学生徒心得書,小学作法書,学校管理法書を手がかりに」教育学研究53(4):355-364.

水谷智彦,2015「教師の懲戒規定の前史:小学生徒心得・罰則の変化に着目して」立教大学教育学科研究年報58:141-158.

森杉夫,1979,「文明開化期の散髪と断髪」社会科学論集10:1-10.

横山友子,2019,「『婦人世界』の読者相談から読み解く黒髪の変遷」人間科学研究集録14:53-74.

 

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