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長距離勤務ママのこんなんでもいっか日記⑥海外留学

 今からはるか約40年前、高校生のとき、同級生が1年間の海外留学をした。当時は、留学はめずらしく、「へー、すごい、勇気ある」と思ったが、留学から戻ってきたら1年進級が遅れ、元の学年に入らなくてはならないと思うと、それだけであまり割のいいことには思えなかった。なんで留年までして海外の学校に行きたいのかなと思っていた。愚かな私は、当時は、大学に入ること、そして大学受験が一番大事と考えていた。

 

 

 大学に入学してしばらくし、急に視野が広がった私は国際経験に関心を持ち、留学したくてしかたなくなったが、そう簡単にチャンスがあるわけではない。その後紆余曲折を経て、やっと30才近くになってアメリカに長期に留学する機会に恵まれた。それは、異なるカルチャーの元に身を置く高揚感もあり、英語がうまく伝わらない絶望感もあり、それなりにエキサイティングな経験であった。留学している間は、飛行機に乗り慣れ、あぶなっかしい場所でも抵抗なく行っていた。また、海外経験によって自分の考え方も大きく変化した。特に、それまで当たり前と思っていた日本の伝統的価値観から、自らが解放されたことを感じた。例えば、家庭を持っているアメリカ人の女性が、I do not like cooking.と言ったときは仰天したのを覚えている。今の世の中では別に驚かないことだが、当時は、母が主婦で料理が得意だったので、女性は結婚したら料理が得意にならなくてはならない、と思い込んでいた。そんな私だったので、「アメリカ人は料理が嫌いでも家庭を持つことができるのか!」と価値観をひっくり返されたわけだ。そうやって、いったん「たが」がはずれると、「結局、何でもありなんだな、自分のしたいことをすればいいのだ」、と思うようになった。そして、そのおかげで、現在私は家庭を持ちながらも家事をあまりしていない。

 

 しかし、帰国してしばらくすると、日本の生活と価値観に再びどっぷり浸かり、留学している間それなりに上達した英語力も元に戻ってしまった。今では、久しぶりに海外に行くと、まるで海外旅行初心者のように日本語のガイドブックに頼りきりの自分がいる。海外の空港で自分がおどおどしきょろきょろしていている姿に、「私、本当に留学していたことがあったのかしら?どうやって海外で1人で生活していたのかしら?」と思うことすらある。

 

 30歳直前とは言え、それでも私は留学し恵まれていると思うが、振り返ると、もう少し若い時に留学していたら、もっと多くの世界が見られたのではないかと思う。また記憶力が高い時に行っていたら、英語ももう少し身に着いたかもしれないと思う。50台半ばの現在、若い頃、特に10代、20代の海外経験は、かけがえのないことではないかと思う。今の自分が高校生だったら留年など気にせずに海外留学に挑戦するだろう。

 

 そんな親の考えを何となく感じていた高校生の娘は、来年、10か月間の海外留学に挑戦することになった。喜ばしいことだが、実際娘が海外に行くとなると今度は心配でしょうがない。英語を覚えて欲しい、さまざまな体験をして欲しいなどという欲張りな考えはどんどんなくなってきている。今は、ただ無事に過ごしてほしい、別に英語がうまくならなくてもいい、元気で過ごして、無事に帰国してくれればいいと思っている。最近は、娘よりも私の方が緊張して落ち着かなくなっている。

(しづか)

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