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長距離勤務ママのこんなんでもいっか日記⑤息子と料理

 長男には、彼が高校に上がる春休みにミートソーススパゲティの作り方を教えた。私の仕事が忙しくなり、長男に自分で昼ごはんくらい作れるようになってほしいと思ったからだ。家庭科の調理実習が嫌いではなかった彼は、丁寧にニンニクと玉ねぎを刻んだ。これらとひき肉を炒め、トマトソースやブイヨン、ローリエを入れて煮込んでミートソースを作り、またスパゲッティーを茹でることを覚えた。彼はそれからしばらくの間、このスパゲティを作り続けた。ミートソーススパゲッティーばかりで家族は飽きてしまったが、それでも作ってくれることは嬉しかった。

 

 

 変化が生じたのは、高3になり受験生になった頃だと思う。部活も引退しているので家にいる時間が多くなった。手持ち無沙汰で台所をウロウロすることが多くなったときに、彼は料理に目覚めた。まず、ミートソース以外のパスタソースの作りかたを覚えた。これに成功すると、それからは料理のレシピを見れば、いろいろな料理がどんどん作れるようになった。そして、嬉しいことに残り物をうまく使うことを覚えた。残り物をうまく使え、かつそれが美味しいと彼は2重の喜びを感じるようになった。もしかすると受験勉強からの逃避行動だったかもしれないが、受験が終わるころには休日の昼ごはんは彼が作ってくれるようになった。また、以前は買い物は大嫌いでどんなに頼んでもおつかいをしてくれなかったが、食材を揃えるために自分で買い物に行くようになった。ただ、なぜか炊飯器だけは使い方が理解できずご飯が炊けなかった。あんな簡単なものなのに。

 

 去年から彼は家をでて大学で寮生活をしている。そこでも自炊を始めた。外食はお金がかかり自炊の方が安いこともあるが、毎日料理をしているそうである。それも夕食だけでなく、昼食も大学から帰って作っているという。ただ、今も炊飯器を買わず、ごはんは普通の鍋でいちいち炊いているという。なぜか全く面倒に思っていない。ごはんの炊き方は、高校のワンゲル部での飯盒炊飯の経験が役に立っているようである。先日は、本格カレーを作りたいと、コリアンダー、クミン、ターメリックなどの調味料を買って作ったそうで、友人にもおすそ分けしたと言っていた。どうやら、料理は彼の趣味になったらしい。結構な事だと思う。

 

 

 長男には、いろいろな事を教え、経験させようとしてきたつもりだ。水泳やテニス、スケートの習い事もさせた。野球もしていたし、サッカー部だったこともある。でも、今、彼の一番の趣味は料理になっている。親が何となく教えたことが、一番彼にピンと来たようだ。

 

 ただ、今の所、料理は作ることと食べることのみが楽しいようで、盛り付けや雰囲気、食事での会話には全く無関心である。先日、寮で作った料理をフライパンや鍋から直接食べている、その上調理に使った菜箸で食べている、ということを知り、私は軽いショックを受けている。パスタも菜箸で食べているようだ。お皿に盛ると、その分洗い物が増えるというが彼の言い分だ。まだ料理は自分の喜びのためであり、料理を作って誰かを喜ばせたいというレベルではないようだ。もう少し成長してほしい。

(しづか)

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