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小中学校の登校時間に、こんなに差があるなんて?

 

 

みなさん、都道府県によって小中学校の登校時間が違うことを知っていましたか?

 

毎日の登校時間は、子どもたちの生活リズムに大きな影響を与えます。この記事では、ガッコムに寄せられた小学校・中学校のデータから、日本各地の小中学校の平均登校時間を比較して、その背景にどんな理由があるのかを探ってみたいと思います。

 

全国の小学校の平均登校時間のランキング

まず、小学校の都道府県ごとの平均登校時間を見ていきましょう。登校時間が早い都道府県から順にランキングを作ってみました。

 

ランキングから、最も登校時間が早い都道府県1位は、愛媛県。続いて2位が静岡県、3位が香川県となっています。

 

 

反対に、最も登校時間が遅い都道府県1位は大阪府。続いて2位が高知県、3位が福岡県がとなっています。このことから、最も早い愛媛県と最も遅い大阪府では、約27分の差があることがわかりました。

 

地図に色分けして視覚的にわかりやすく表示すると、このようになりました。

 

 

図1 小学校平均登校時間の都道府県ごとの分布

 

平均登校時間が早いほど、濃い黄色になり、平均登校時間が遅くなればなるほど、薄い緑色の分布になっています。

 

地図で俯瞰的に見た限りでは、特定の地方・エリアに偏りがある等の特徴は見られず、登校時間のわかりやすい傾向があるとは言えない結果となりました。

 

全国の中学校の平均登校時間のランキング

続いて、中学校の都道府県ごとの平均登校時間を見てみましょう。

 

最も平均登校時間が早い都道府県は、1位が静岡県、2位が青森県、3位が香川県という結果になりました。

 

 

一方で、最も平均登校時間が遅い都道府県は、神奈川県。2位が奈良県で3位が京都府となっています。 最も登校時間が早い静岡県と、最も登校時間が早い神奈川県では29分の差がありました。

 

こちらも地図に色分けをしてみました。

 

図2 中学校平均登校時間の都道府県ごとの分布

 

平均登校時間が早いほど濃い黄色になり、登校時間が遅くなるほど薄い青色の分布になっています。小学校同様、特定の地方・エリアでの偏り等はありません。ですが薄い色、つまり登校時間の遅い都道府県に着目してみると、小学校・中学校共に都市部に比較的多いように見受けられます。

 

そこで、今度は学校のある都市規模別で平均登校時間を見てみましょう。

 

 

上記表の通り、小学校・中学校共に都市規模が大きくなるにつれて時間が遅くなっていることがわかります。大都市と郡部で登校時間を比較すると、小学校では約11分、中学校では約10分の差があるようです。

 

全国の小学校と中学校の登校時間を比較すると

ここまでは全国の小学校と中学校の平均登校時間を別々に見てきましたが、ここからは両者を比較して、さらに深く掘り下げていきます。

 

 

図 3全国の小学校と中学校の登校時間の分布

 

まず、全国の小学校と中学校の登校時間を比べてみると、最頻値と中央値がどちらも8:15で一致していました。 このことから、全国的に見ても小学校と中学校の登校時間は非常に近い時間帯に集中していることがわかりますね。

 

また、小学校・中学校の登校時間の75%以上が8:00~8:29の間に分布していることもわかりました

 

さらに、全国平均で見た場合、小学校の平均登校時間は8:10:22、中学校の平均登校時間は8:16:11となっており、中学校の方がやや遅い時間に登校する傾向が見られました。そのため中学生の方が少しだけ余裕を持った朝を過ごしていることが言えそうですね。

 

小学校と中学校の登校時間には深い関係が

さて、小学校と中学校の登校時間の相関関係についても注目すべき点があります。

 

統計的に分析した結果、小学校と中学校の登校時間には強い相関が見られました。これは、同じ自治体が小中学校の運営を担っていることを考えると、当然と言えるかもしれません。つまり、ある地域で小学生が早く登校するならば、その地域の中学生も同様に早く登校する傾向が強いということです。

 

次に、登校時間と地理的な要因である「緯度」と「経度」との関係についても調査を行いました。

 

国立天文台によると、日の出・日の入りの時刻は見る場所や日によって異なり、経度で1度東に進むごとに、4分ずつ日の出・日の入りが早くなります(国立天文台 2024:第1-3段落)。そのため、東日本のほうが西日本よりも日の出・日の入りが早いことから登校時間も早くなると仮説を立て、小学校と中学校の登校時間と経度との相関を分析したところ、こちらについては相関はほとんど見られませんでした。

 

同様に、気温による登校時間の影響有無を見るために、緯度との相関を分析しましたが、こちらについても相関はほとんど見られませんでした。

 

これらの結果から、登校時間が地理的な要因よりも、むしろ各地域の社会の特徴や学校・自治体特有の教育政策によって大きく左右されることが言えそうです。

 

【参考文献】

国立天文台,2024,「場所によって日の出・日の入りの時刻って違うの?」(2024年8月19日取得)

 

なぜこんなに違う?都道府県ごとの登校時間差の理由

ここまで、全国の小学生・中学生の平均登校時間の違いを見ていきました。

 

都道府県で平均登校時間に差がある理由は、登校時間に明確なルールが存在せず、学校や自治体が登校時間を決めているからのようです。

 

文部科学省の小学校学習指導要領(平成29年告示)によると、授業時数等の取扱いについては「各学校の時間割については、次の事項を踏まえ適切に編成するものとする。〔中略〕(エ) 各学校において,児童や学校,地域の実態,各教科等や学習活動の特質等に応じて,創意工夫を生かした時間割を弾力的に編成できること」(文部科学省2017:19)と紹介されています。そのため、登校時間は学校や自治体が決めたカリキュラムに依存すると言ってよさそうです。

 

新たな取り組み『小1の壁』対策とその課題

さらに、都道府県によっては、子供の小学校入学によって預け先がなくなってしまうことや、働きづらくなってしまう親を支援するために、小学校の開門時刻を早め、登校時間まで児童を見守る動きが広がっています。 このような近年共働き世代の親が直面している問題は「小1の壁」と呼ばれています。

 

読売新聞によると、「小1の壁」とは、子どもが小学校に入学した際に、登校前や放課後の預け先が見つからず、親が働き方を変えたり、退職を余儀なくされたりする問題です。また、未就学児でなければ勤務時間短縮制度が利用できないことも含まれるとされています(『読売新聞』2024.4.23 大阪朝刊)。

 

この「小1の壁」に対応するために、登校時間を早めている地域や自治体も存在します。

 

たとえば、大阪市豊中氏では、今年四月から全市小学校で開門時間を早め、民間スタッフが登校時間まで子供を見守る制度を導入しました。 さらに、神奈川県横浜市でも、同様の取り組みを一部の小学校で試験的に開始し、シルバー人材センターに登録した高齢者を見守り役として配置しています(『読売新聞』2024.05.01 朝刊)

 

【参考文献】

文部科学省,2017,「小学校学習指導要領(平成 29 年告示)」(2024年8月9日取得)

 

最後に

日本全国の小中学校の登校時間は、各都道府県の自治体の政策や学校ごとのカリキュラムに大きく影響されていることがわかりました。

 

愛媛県や静岡県のように、早起きの子どもたちが多い地域もあれば、大阪府や神奈川県のように、ゆったりとした朝を迎える地域もあります。これらの違いは、「小1の壁」と呼ばれる社会問題への対応や、各都道府県の自治体の特性、都市の規模によるものだと考えられます。

 

今後、さらに多様化する社会において、子どもたちが安心して学校生活を送れる環境づくりが進んでいくことを期待したいですね。

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