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元・公立学校の養護教諭 妖怪先生のつれづれ話⑭「妖怪先生 授業に参加する1 自画自賛?!したエイズ教育」

妖怪先生に性教育の指導の依頼!

今時の子ども達の「性」に対する興味はものすごいものがあります。

それは、社会環境の変化と無縁ではありません。

性情報が氾濫して、そのスピードに学校教育が追い付かない状況といえるでしょう。

 

昔々(?)は、学校現場では性教育計画はできていましたが意外と後回しにされてきました。

仮に実施してもさらっと表面だけの指導にとどまり、本当に子ども達の心に響いた学習になっていたか……おおいに疑問でした。

 

そんな折、私は、6学年の男性担任A先生からのティームティーチングによる「性指導」の依頼をうけました。

彼は、「しっかりと知識をつけさせたい」「子ども達の心に響かせたい」との思いがあり、それを目標にA先生と一緒に計画を作成始めたのです。

 

その計画は、3ステップに分けてのシリーズ化したものでした。

子ども達は、高学年のため、もう子供だまし(?)の手は使えないほど知識は持っています。

またその知識をひけらかしている子ども達もいましたので、「直球勝負で行こう」という事になりました。

 

受精と妊娠のしくみ(性交を含む)については学習済みでしたので、今回の3シリーズの内容を「エイズ教育」に絞り、

 

1. 「一般的なうつる病気について」(インフルエンザ等)

2. 「男女間で移る病気について」(性病、エイズ等)

3. 「エイズと闘った少年」(ライアン・ホワイト君の事例)

 

と決め、1週間に1時間のペースで実施となりました。

 

大枠が決まった後は、授業内容の組み立て(指導案といいます)とワークシートの作成、A先生と私の2人の担当分担等について決めます。

しかし、作成中はいろいろアイデアが浮かぶのですが、小学校は45分の授業時間ですので、あれもこれも伝えたい気持ちはあっても、なかなか指導案の中にいれることは難しいです。

そのため、「最低限これだけはしっかり知ってほしい」内容を絞り込んで決めていったのです。

しかし、シリーズ化しましたので時間的に余裕が生まれ、「性指導」の流れとポイントがはっきりしてやり易かったです。

 

授業の成果はいかに!?

さて、いよいよ本番です。

1と2については、私が主となり担任がサポート役という事で展開しました。

この2時間は、病気に関する内容が主でしたので、養護教諭の専門性を活かして実施していきました。

 

子ども達は、普段は授業に出ない教師や外部の方々の話はけっこう聞くものですね。私は、この2時間を、子ども達の机の間を歩きひとりひとりの反応をみながら話をしていきました。

特に、性病やエイズのうつる課程の話には、みんな真剣な顔、顔、顔。

私は、この2時間で「確たる手ごたえ」を感じました。

 

そして、いよいよ最終回の「「エイズと闘った少年」の授業です。

実は、この授業だけは、担任と話し合いちょっと変わった展開にしました。

それは、持病の血友病に対する輸血治療を受けてエイズにり患し、様々な偏見に苦しみながらも、18歳で亡くなるまで偏見をなくす活動をした物語を私が読み聞かせながら、子ども達に考えなどの意見交換を実施するというものでした。

その内容がより理解されるように、ライアン君の住んでいる町で差別をされている様子、転校しなければならなくなった様子、引っ越したところでのエイズ偏見撲滅運動等の画像を投影しながら実施しました。

そして、その時々に私が読み聞かせをして、担任がグループディスカッションをさせるといった流れでした。

 

子ども達は、いつもの授業とは違う展開のため、最初は多くの子が戸惑いをみせていましたが、担任であるA先生の上手なリードで「読み聞かせ⇒ワークシード作業⇒発表」と、各シーンごとに実施していったのです。

 

そして、最後のシーン。

ここは、ライアン君が偏見をなくす活動をしながらも、日に日に体調が悪化して18歳で亡くなるところですが、そのシーンを読み切ったところ……読み終わり、チャイムまで1分強の時間があったでしょうか。

教室中がシーンと静まり返り、誰一人言葉を発せず動く子もいなかったのです。

 

ふとみると、目頭が赤くなっている子も数人みられ、私は「あっ、心に届いたな」と思った瞬間でした。

担任はその様子を見ながら「私達がエイズ患者さんだけでなく、いろいろな人に偏見の目を向けないためにはどうしたらよいか考えましょう」と言う言葉をかけて授業が終了したのです。

 

その後、授業の後片付けをしていたところ、一人の男の子が私と担任のところに駆け寄ってきて、

「先生、俺、感動した!!!」と言ってくれたのです。

 

私はびっくりしましたが「わからないことがあったら聞いてね」と言って教室を後にしました。

 

そして、保健室の自席に座ったとたんに目頭が熱くなってしまったのです。

「40名弱の子ども達に、ひとりでも多く伝えられたら……」その目標の一歩、小さな一歩ですが達成できたかな……と思いました。

 

その後、別の学級の子ども達にも授業を実施しましたが、終了すると代わるがわる私のところに来ては、エイズについて質問するようになりました。

とても嬉しく、じっくり計画したことが功を奏したと思っています。

(元保健室の妖怪先生)

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