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学校の四季⑫「ICTが変える未来の教室」

■ 学校は昭和時代の事務環境

 

 教育セミナーで、学校にICT(情報通信技術)を取り入れている先進地方公共団体の首長の講演を聴いた。中央省庁出身の若いこの首長が小中学校を訪れて驚いたのは、職員室にある行事黒板だったという。「まだ黒板に行事予定を書いているのか」と思ったそうだ。

 校内の情報共有は、印刷機で増し刷りしてプリントを配布する、印刷できないものは回覧板で回す、学校間の連絡は電話かファックス、という昭和のまま取り残された事務環境をこの首長は、世の中の標準程度の事務環境に変えたいと考え改革したのだと語った。

 

 現在では、校務シェアボード(グループウエア)を全校に導入し自宅など学校外からでもPCやスマホで連絡内容を確認できるようにした。また職員会議もペーパーレス化、会議調整などもスケジューラとメールで完了できるようにし、黒板への行事予定の手書きはなくなった。

 

 多くの公立小中学校の情報環境がこの首長が指摘するような状況にあるのは事実だ。しかし学校の情報環境がそのような状況に留まっているのはなにも学校の責任ではない。学校は、地方公共団体が定めた予算に基づいて運営されている。機器や無線LAN等のネットワーク、システムの構築等にコストがかかり整備が進まないのである。だからこの首長が決断したように地方公共団体が相応の予算をつけ機器を導入しシステムを構築しなければ学校の情報環境は大きく変わらないのが実状である。

 

■ 教室から黒板はなくなるか

 

 

 同じように教室での情報環境はどうか。現在導入されつつある教室での情報機器に、電子黒板とタブレット端末がある。この首長の地方公共団体では、60型電子黒板を小中学校の全普通教室に導入し移動式電子黒板も各校6台程度導入しているそうだ。また教科書のデジタル化に対応して中学校にタブレット端末を各校120台導入したという。

 これほどの規模で情報機器が導入されている地方公共団体は全国では少ない。この首長が、国が進める教育の情報化の推進や補助事業に精通しているからこそ実現できた結果といえるだろう。

 

 教室での情報環境でもうひとつ注目したいのは、2020年度から次期学習指導要領が実施されるのに伴い検討されている「デジタル教科書」についてである。文科省は2016年12月に、「『デジタル教科書』の位置付けに関する検討会議 最終まとめ」を公表している。この「最終まとめ」には「デジタル教科書」に関する現時点で最も適切と考えられる基本的な考え方が述べられている。私が注目したのは、「デジタル教科書」の導入の目的は児童生徒の学びを充実させることであり、現在の紙の教科書にとって代えようと性急に進めるものではないと書かれている点だ。紙の教科書と「デジタル教科書」の併用が現実的な推進策だということなのだろう。

 

 さて、職員室から行事黒板がなくなるように未来の教室から黒板がなくなる日は来るのだろうか。そんな未来の教室を想像するのは易しいが、その未来を予測することはどのように創造的な思考に優れた人でも失敗するだろう。未来の予測がいかに難しいか。ビル・ゲイツがかつて、「どんな人でも640キロバイトあれば十分だ」と言ったのは有名な話である。それは1981年のことで今から37年前、まさに昭和時代のことだった。

(浩)

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