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長距離勤務ママのこんなんでもいっか日記③ピアノ

娘には、小さい頃からいろいろな習い事をさせた。

新体操、英語、ピアノ、柔道、アート、水泳、そして塾。柔道は、オリンピック選手が指導者の立派な教室だったが、でんぐり返しを繰り返す練習ですぐに気分が悪くなり、練習の後半は見学になった。それを繰り返し、結局数回で無念の退会をした。アート教室、英語、水泳はそれなりに続いたが、中学受験や引っ越しなどで辞めてしまった。

 

 

5歳から始め中学生になっても続いている習い事はピアノである。中学生でピアノを続けている子は多くなく、そのようなお子さんは大抵とても上手である。だが娘は違う。あまり熱心に練習しないため、進度は非常に遅い。また特に音楽の才能があるとも感じられない。その娘がピアノを続けているのは、ピアノの先生が素晴らしいからである。優れたピアニストであるだけでなく指導も上手い。決して怒らないし、どんなに練習していかなくても、何かちょっとでもできるところがあると褒めて下さる。そして、なぜか娘とウマが合うようで、いろいろおしゃべりもしているようだ。娘は家でちっとも練習をしなくても、ピアノのレッスンには嫌がらずに通う。ピアノを辞めるタイミングはこれまでに幾度となくあった。特に、勤勉家の父親は、怠けて練習をあまりしない娘によく腹を立て、「そんなに練習しないのなら辞めてしまえ」とぶつぶつ言っていた。

 

その娘が、何の勘違いか、夏休み前に、中学の合唱コンクールでのピアノ伴奏を引き受けたというニュースは、我が家に号外を出したくなるほどの衝撃ニュースだった。両親、祖母、そしてピアノの先生もみな一様に驚いた。それまでのピアノの練習は、のらりくらりと100%マイペースでやってきた。こちらも、ピアノの発表会の本番で間違えても「上手だったよ」と褒めていた。しかし、合唱コンクールでは、正しく間違えないように弾けないとクラスメートに迷惑をかけてしまう。私は、目が吊り上がる思いがした。なんで引き受けたんだと娘を責めたくなった。

 

 

しかし、ともかく10月の本番までには、伴奏ができるようにならなくてはいけない。私は、初めて娘のピアノに対してプレッシャーを感じた。ピアノの先生はクラシック音楽が専門であったが、お願いして、合唱コンの曲をレッスンに入れてもらった。先生は快く引き受けてくれ、「あまり難しくないので練習をすればできるようになりますよ」と言ってくださった。また、それまで家では電子ピアノを使用していたが、私の実家からアップライトのピアノをもらってきた。夏休みと9月の間、私は「ピアノピアノ」と娘に言い続けた。今までにないことだった。

 

夏の間、娘は生まれて初めて毎日ピアノの練習をした。その練習の甲斐があり、8月の終わりごろに、通して最後まで弾けるようになり、9月に入るとすらすら弾けるようになった。10月になると間違いがほとんどなくなった。

そして本番。出だしの音は小さかったが、娘は間違えなく弾くことができた。私は、演奏の間、どきどきしながら体を固くして、間違えないように弾けますにとひたすら祈り、演奏が終わると体中の力が抜ける思いがした。やっと長い夏が終わったと感じた。

 

後で、娘は、大勢の前でそしてグランドピアノで伴奏できたのはとても気持ちが良かったと話してくれた。そして、来年もやりたいと言った。でも、私は疲れた思いがして、「是非来年もやりなさい」とは言えなかった。

(しづか)

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